今回は銀行関連の業界を「メガバンク・地方銀行」「ネット銀行・FinTech」の2つに分けてワンポイント解説をします。
この記事は「ネット銀行・FinTech業界」についての解説です。
Table of Contents
3つのポイント
この記事では業界の最近の動きを押さえる3つのポイントを中心に解説します。
①ATM銀行は口座数が大きく伸びる コロナで利用は一時減少
②非接触・非対面でネット決済サービスは各社が鎬を削る
③個人資産運用や送金などFinTechサービスとの連携
ATM銀行利用拡大、ネット決済サービス拡大、FinTech連携の動きについて説明します。
ネット銀行・FinTech業界とは
まずは最初に「ネット銀行・FinTech業界」の概要を確認していきましょう。
もう一本の記事で取り上げている「メガバンク・地方銀行」を従来型・伝統型の銀行とすると、「ネット銀行・FinTech業界」は新しい銀行サービスを指しています。
主な分類としては「ATM銀行」「ネット銀行」に分けることができ、「ネット銀行」はネットバンキングやネット決済を中心とする銀行と、個人資産運用を中心とする銀行に分かれます。これらの銀行と連動して、銀行としての資格を持たないものの金融サービスを提供するFinTech企業があります。
これらの銀行や金融サービスは、1990年代後半にバブル経済崩壊後の改革として行われた「金融ビッグバン」による規制緩和の結果生まれました。2000年に設立されたジャパンネット銀行(現PayPay銀行)、2001年に設立されたアイワイバンク銀行(現セブン銀行)を皮切りに10社が活動しており、2022年にはLINE銀行の設立が予定されています。これらの銀行は、金融庁では「新たな形態の銀行」と呼んでおり、「新銀行」と呼ばれることもあります。
これらの「新しい形態の銀行」のビジネスモデルは「ATMによる手数料」「ネット決済による手数料」「個人投資取り扱いによる手数料」に分けることができます。順に説明します。
◎ATM銀行「ATMによる手数料」
コンビニや商業施設に設置されているATM(現金自動預け払い機)で預金の入出金やキャッシングなどのサービスを提供しています。設置台数が非常に多く利用できる時間帯が広いなど利便性が高いため、地銀などが設置するATMよりも利便性が高く利用が普及しています。
主にATM利用による手数料収入を収益源としているほか、設置店舗の利用増加によるシナジー効果も生んでいます。「セブン銀行」「イオン銀行」「ローソン銀行」がこの種類の銀行です。
◎ネット決済中心「ネット決済による手数料」
ネットサービスやネット通販(Eコマース)の決済手段としてネットバンキングを提供するのがネット銀行です。この中でも、主にネットサービス等の決済取扱手数料を収益源としている銀行を、この記事では「ネット決済中心」の銀行としました。
ネット銀行の利点はネットで口座が開設でき、実店舗が不要でATMなどの設置も必要ないため、運営コストが低く抑えられることです。そのため、口座の取引が増えても事務コストが押さえられ利益を上げやすくなっています。また、口座の預金が増えれば銀行の運用資金が増えるため、為替や証券などを通した運用益を得やすくなります。「PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)」「楽天銀行」「auじぶん銀行」設立予定の「LINE銀行」などがこの種類の銀行です。
◎個人資産運用中心「投資取り扱いによる手数料」
ネット銀行のうち個人資産運用向けの決済サービスを中心とする銀行を、この記事では「個人資産運用中心」の銀行とカテゴライズしました。株式、為替(FX)などの取引サービスと連動して個人資産の運用口座を提供しています。また、住宅ローンや学資ローンなどの個人融資を強化しているネット銀行も増えています。
資産運用をする顧客が中心となるため、口座当たりの預金額が大きく、運用益も出しやすい傾向にあります。「住信SBIネット銀行」「大和ネクスト銀行」といった証券会社系の銀行や、「ソニー銀行」「GMOあおぞらネット銀行」などがこの種類の銀行です。
こういった新銀行に加えて、FinTechサービスを提供する非銀行企業も増えています。
「FinTech」とは「Finance(金融)」と「Technology(技術)」をくっつけた用語で、ネット・スマートフォンを通して金融サービスの利便性を向上させるサービスを指しています。銀行やクレジットカードの履歴と連動する家計簿アプリ、個人資産の管理アプリ、株式や為替のデイトレードアプリ、店舗の決済を行うPOSアプリ、仮想通貨の売買アプリ、ネット経由の国際送金サービスなど、お金のやり取りに関するサービスを提供しています。
ほとんどのFinTechサービスは銀行口座との入出金・振込を行う必要があります。以前は提携銀行のみ使えるケースが多かったのですが、銀行がこういったFinTechとの連携用に「銀行API」(プログラム上のデータ連携機能)を提供することが増え、ネット銀行のサービス向上にも直結しています。
市場の規模と変化
ATM銀行やネット銀行など新しい形態の銀行は、2000年以降スタートした新しい業界です。
個人向けの様々なサービスと連動することで利用者の利便性向上、利用者の拡大につながるため、コンビニなどの小売流通業、ネットサービス企業や通信サービス企業、証券会社などが新しい銀行を設立して参入しています。また、従来型の銀行もその設立に出資やノウハウ提供などで協力しており、サービス連携がさらに進んでいくと考えられます。
ATM銀行・ネット銀行は利便性の高さから手数料収入と口座開設数が伸び、個人資産管理のサービス強化から預金額も伸び続けています。
従来型の銀行に比べて成長性が著しい業界ですが、新規参入や海外FinTechサービスとの競合もあるため、企業の興亡は今後も激しいものと思われます。
トピックス1
①ATM銀行は口座数が大きく伸びる コロナで利用は一時減少
ATMはほぼすべてのコンビニに設置されており、2020年の設置台数は約57000件に達しています。これらのATMでの利用手数料が割安になることからATM銀行の新規口座開設数は伸び続けています。
一方で、ATMの利用はコロナ禍の外出制限もあり一時的に利用が落ち込みました。2021年以降は回復傾向が見込まれています。
トピックス2
②非接触・非対面でネット決済サービスは各社が鎬を削る
コロナ禍によって非接触・非対面サービスのニーズが一気に増えたこともあり、ネット通販の決済や店舗でのキャッシュレス決済(Pay払い)の利用が増えています。国がキャッシュレス決済普及のためにPay払いのポイント還元や、マイナンバーカードの普及施策としてマイナポイント還元を実施したことなども後押しとなっています。
ネット決済サービスについては、2019年には7Payスタート時の不正アクセス問題、2020年にはドコモ口座の不正引き出し問題などがあり、サービス向上と同時にセキュリティ面での強化も重要になっています。
トピックス3
③個人資産運用や送金などFinTechサービスとの連携
ネット銀行の利用ニーズとして、個人資産運用や送金などのFinTechサービスとの連携があります。株式投資や為替取引(FX)はアプリ等で手軽にできる個人資産運用として人気があり、多くのネット銀行が銀行サービスと連携して証券サービスを提供しています。また、個人間の送金をキャッシュレスで行えるサービスも、多くのPayサービスが提供しています。
こういった便利なFinTechサービスとの連動が、スムーズに行えることが銀行選びの一つの軸となっています。
また、ビットコインに代表される仮想通貨(暗号資産)への取り組みも活発化しています。仮想通貨は国際的な送金手段や支払通貨としての役割のほかに、個人投資の対象としても注目されています。
これらのFinTechサービスへの取り組みが、ネット銀行の将来性のカギとなっています。
まとめ
ATM銀行、ネット銀行、そして連携するFinTechサービスは、利用者の利便性向上でしのぎを削っています。金融サービスは今後も技術開発・サービス開発が続き、新規参入やプレイヤーの交代が激しく続くと思われます。そのカギとなるのはサービス展開速度とセキュリティを含めた技術力の高さでしょう。
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