今回は銀行関連の業界を「メガバンク・地方銀行」「ネット銀行・FinTech」の2つに分けてワンポイント解説をします。

この記事は「メガバンク・地方銀行業界」についての解説です。

3つのポイント

この記事では業界の最近の動きを押さえる3つのポイントを中心に解説します。
①人口減と低金利を背景に店舗削減など改革が進む
②コロナ倒産に備えた与信費用が負担増
③金融商品取り扱いや海外銀行業務などサービス多様化の動き
店舗削減など改革の動き、コロナによる与信費用の負担増、サービス多様化の動きについて説明します。

メガバンク・地方銀行業界とは

まずは最初に「メガバンク・地方銀行業界」の概要を確認していきましょう。
大まかに銀行の果たす役割をまとめると、「預金」「融資」「為替」の3つになります。

  • 「預金」は個人や法人の現金を預かり口座管理と入出金を取り扱います。
  • 「融資」は個人や法人への資金貸付を行います。
  • 「為替」は他の口座への振込送金や手形の発行、外貨との交換を取り扱います。

銀行のビジネスモデルは、個人・法人から預かった現金を金利差益や為替差益、貸付利子などで増やし利益を得るものです。また、口座の入出金や振込などの取扱手数料も主な収益源です。しかし、長引く超低金利やネット銀行の台頭などもあり、ビジネスモデルの転換を迫られています。

銀行の種類は主に4種類で「都市銀行(メガバンク)」「地方銀行(地銀、第二地銀)」「信託銀行」「新銀行(ネット銀行・ATM銀行)」です。類似する預金を取り扱う金融機関として「信用金庫・信用協同組合・労働金庫」があります。また預金を取り扱わない機関として「中央銀行(日本銀行)」「特別銀行(日本政策投資銀行)」「公庫」などがあります。

簡単に種類を説明します。

◎「都市銀行(メガバンク)」

日本全国に支店網を持つ巨大銀行で、現在国内には「三井住友フィナンシャルグループ」「三菱UFJフィナンシャルグループ」「みずほフィナンシャルグループ」の3つのメガバンクがあります。これらの銀行は1990年代のバブル経済後から始まった銀行再編によって生まれました。

メガバンク3行の他に、地域を跨ぐ準メガバンクとされる銀行がいくつかあり、「りそなホールディングス」「新生銀行」「あおぞら銀行」がそれに当たるとされます。また、郵政民営化によって2007年に誕生した「ゆうちょ銀行」もメガバンクとして扱われませんが、規模や機能はメガバンクに相当します。

◎「地方銀行(第一地銀、第二地銀)」

都道府県単位で営業展開する銀行を地方銀行(第一地銀)と呼びます。地方銀行は明治期の国立銀行(ナンバー銀行)にルーツを持つものが多く、戦時中に一都道府県あたり一行に整理されました。一方で第二地方銀行と呼ばれる銀行もあります。こちらはかつて存在した「相互銀行」をルーツとしています。一般に第一地銀と第二地銀では第一地銀の規模が大きいケースが多いですが、取り扱う業務に差はありません。

ATMやネットバンキングの普及、低金利政策の影響から地方銀行の再編が進んでいます。

◎「信託銀行」

預金や融資を行う普通銀行に加えて、個人や法人の資産を預かり運用する資格を持つ銀行が信託銀行です。現金資産の運用のほか、株式証券や不動産などの管理運用なども行います。全てのメガバンクがグループ内に信託銀行を抱えているほか、証券系や外資系の信託銀行があり、地方銀行などで信託銀行を兼ねているところも多数あります。

◎「新銀行(ネット銀行・ATM銀行)」

メガバンク・地銀に代わってインターネット上での入出金管理やコンビニATMなどのサービスを提供する銀行です。金融ビッグバンによる規制緩和で新銀行が活発化し、2000年に設立されたジャパンネット銀行(現PayPay銀行)、2001年に設立されたセブン銀行を皮切りに10社が活動しており、今後の利用拡大が見込まれます。「ネット銀行・FinTech」の別記事で詳しく解説します。

◎「信用金庫・信用協同組合・労働金庫、農林水産業金融機関」

普通銀行と同様の預金・金融・為替業務を取り扱う金融機関ですが、活動地域や利用できる対象者が限定されています。ビジネスモデルや事業環境はほぼ地方銀行と似ています。

◎「中央銀行(日本銀行)」           

日本全体の金融政策を支える銀行で、行政機関ではありませんが行政機関に近い役割を担っています。紙幣の発行、政策金利の決定、銀行への融資・為替、国庫金の入出金、外国為替市場への介入などを行っています。

◎「政策金融機関」

政府系の公的な金融機関で、主に産業開発目的の企業融資や、公的融資の運用を行っています。「日本政策投資銀行」「日本政策金融公庫」「国際協力銀行」「商工組合中央金庫」「住宅金融支援機構」などがあります。

市場の規模と変化

メガバンク・地銀業界は人口減少と長く続く超低金利政策の影響を受けて、市場規模が落ち込んでいる状況です。

人口減少は銀行を利用する個人・法人の減少に直結しており、特に地方での影響が大きく地銀の経営を苦しくしています。また、超低金利政策は資金供給面では有利ですが、銀行の利益率を大きく下げており、業績面でのマイナス要因となっています。

また、ネット銀行・ATM銀行の伸長も従来型銀行の経営にとってマイナスとなっています。振込手数料やATM取扱手数料が減少し、銀行の利益を減らすこととなっています。多くの銀行では窓口業務のニーズ減少に伴って店舗統廃合などの合理化を進めています。また、地銀の再編が政府主導で進められており、「第4のメガバンク構想」などのニュースも聞かれます。

※一般社団法人全国銀行協会全国銀行決算発表より

一方で、高齢者の増加に伴い資産管理・運用のニーズは増えており、信託銀行の業務は伸びています。また、銀行には個人や企業の情報資産が蓄積されており、潜在的な営業チャネルが眠っている状態です。これまでの関係性を生かした事業展開が銀行の今後の生き残りのカギとなります。

トピックス1

①人口減と低金利を背景に店舗削減など改革が進む
全国的な人口減少に加えてネットバンキングの普及によって、銀行店舗での窓口業務ニーズは減少しています。また、長く続く超低金利政策によって銀行の利益率は悪化しています。多くの銀行では利益率改善のため店舗数の削減や、「資産運用専用店舗」など機能に特化した店舗を展開するなど、効率的な企業運営に向けた改革を進めています。

今後は地方銀行の再編も控えており、合併統合によってよりスリムな組織とサービス強化へと進んでいくことが予想されます。

トピックス2

②コロナ倒産に備えた与信費用が負担増
コロナ禍によって銀行の融資先である企業の経営状態が不安定になっています。銀行は融資先の倒産などによって発生する貸し倒れに備えて、準備金などの与信費用を積み増しており、コロナ禍は銀行にとっても負担増となっています。

銀行は企業に対する経営やサービス支援を強化しており、コロナ禍で苦境に立たされる企業を融資と支援策で支えられるか、地力が試されています。

トピックス3

③金融商品取り扱いや海外銀行業務などサービス多様化の動き
超低金利政策やコロナ禍など、短期的には経営にマイナスの影響が出ており、地銀再編など業界の変動は大きくなっています。こういった情勢に対して、銀行はそれぞれ生き残り策を図っています。

メガバンクでは三井住友フィナンシャルグループが2019年度の決算で初めて首位に立ち話題となりました。その要因としてあげられたのが機能特化型店舗を中心とした再編と、東南アジアでの銀行業務の拡大で、利益率の改善につなげています。

地方銀行では情報資産を生かした法人向けコンサルティングや金融商品取り扱いの拡大、信託業務の強化などに取り組んでおり、大手地銀同士の横の連携強化も増えてきました。
今後は預金・融資だけに頼らない多様なサービスの提供が重要となってきます。

まとめ

メガバンクや地銀は再編や改革といったマイナスイメージのキーワードが並びますが、同時に業界構造が大きく変わる変革期はチャンスも大きくなるといえます。地銀再編が本格化する中、銀行ならではの役割を獲得できる銀行には拡大成長の機会があります。
就活の中で銀行を見ていく際には、業界内でのポジションや改革のスピード感、新規ビジネスの展開などに注目して企業研究を進める必要があります。

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