
富山県小矢部市に本社を置き、東京都品川区に東京支社も擁する北栄電設株式会社は、「日本の大動脈」と言える全国各地の高速道路における電気・通信インフラ工事などを行っている企業。高速道路の電送管路工事においては日本一の施工実績を誇る創業72年の老舗であると同時に、「自由すぎる社風」が魅力となっている会社でもあります。そんな北栄電設株式会社が行っているのが、VR(仮想空間)によって工事現場のリアルを体感できたり、オリジナルのゲームを通じて施工管理=プロジェクトマネージメントの基礎が学べるなどの、非常にユニークなインターンシップ。それらはいったいどんな内容で、何を目的に開発されたものなのでしょうか? 代表取締役の渋谷辰則さんに聞いてみました!

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普通は立ち入ることができない「工事現場」をVR(仮想空間)でリアルに体験できるインターンシップとは?
――御社のインターンシップでは「VR(仮想空間)で工事現場体験!」というユニークなプログラムがあるそうですが、詳細を教えていただけますか?
渋谷辰則社長(以下、渋谷):VRゴーグルを装着していただき、弊社が行っている工事の現場を、擬似的にですが、きわめてリアルに体験していただくという内容です。VRゴーグルを着けますと、振り向けば後ろの景色が見えますし、見上げれば、そこには空が見えます。そういったVR環境のなかで「自分はどういうふうに働くことになるのか?」ということを、リアルに感じていただけると思っています。

――実際に工事用の資材を運んだりするのでしょうか?
渋谷:社員の1日を体験する――というような構成ですね。まずは朝礼時のミーティングに参加し、車に乗って現場へ行きます。当社の社員が現場で行う業務は「監督」ですが、監督の業務内容というのは少々わかりづらいため、参加者には「職人さんの仕事」を体験してもらうことになります。高所作業車に乗り込んだり、ドリルを使ってみたりしてもらいます。
――VRとはいえ「実際の現場」をリアルに体感できるため、これのよって入社後のミスマッチは減りそうですね?
渋谷:まさにおっしゃるとおりです。ミスマッチは当然ながら企業にとって損失ですが、学生さんとしても、せっかくの新卒というファーストキャリアから早期に離脱してしまうことになりますので、「お互い不幸」という状態になってしまいます。
それゆえなんとしてでもミスマッチの発生は避けたいのですが、当社の場合は「現場に学生さんを連れて行けない」という課題がありました。そういった課題をなんとか解決したいというのが、当社が実施しているインターンシップの基本的なコンセプトです。

プロジェクトマネージメントの基本を楽しみながら学べる「施工管理GAME」とは?
――「VR(仮想空間)で工事現場体験!」以外には、どんなプログラムが用意されているのでしょうか?
渋谷:まずは当社や建設業界のことを予備知識としてご説明した後、先ほど申し上げた「VR体験」をしてもらいますが、一番の目玉コンテンツは「施工管理GAME」という、自社で開発したゲームです。これは施工管理という、現場で実際に体験できない仕事を、社内で模擬体験できるシミュレーションゲームをプレイしながら「施工管理」という仕事について学んでいただきます。
そして最後に「オフィスツアー」で、会社内を隅から隅までご紹介します。社内にいる社員とコミュニケーションを取ってもらい、私が常々言っている「自由すぎる社風」などが本当なのか、それとも嘘なのか、学生さんご自身の目と肌感覚でとらえてもらう――というのがプログラムの概要です。
――プログラムはすべて「対面」で行われるのでしょうか?
渋谷:1Dayインターンシップはすべて対面で、富山県にある当社の本社にて実施いたします。もちろんその後の企業説明会などは、オンラインを含めて対応していますが。
――先ほど「目玉コンテンツである」とおっしゃった「施工管理GAME」について、さらに詳細を教えてください。
渋谷:魔王軍によって壊滅した王国の復興を担うリーダーを選抜するために、「施工管理の頂点」を決めるバトルが開催されるというストーリーになっています。プレイヤーはそれぞれがライバル同士となってゲームを進めていきます。具体的にはレゴブロックを使い、限られたリソースのなかで意思決定をしながら効率的に建造物を作っていくというゲームですが、途中でさまざまな「偶発的な事態」が出現します。実際の工事現場でも、雨が降って工事ができなくなったり、資材の納入が遅れてしまったりというのは日常茶飯事です。また万が一のことではありますが、事故が発生することもあります。
「施工管理GAME」では、そういったリスクをヘッジしながら、いかに効率的に工事を進めていけるかというのが勝負の鍵です。そしてプレイヤーには「予算」も管理してもらいますので、最終的には工事を無事完成させたうえで、もっとも多くの利益を出したプレイヤーまたはチームの勝ちということになります。


――ゲームの世界観や背景などは「いかにもゲーム的」ですが、学べる内容はかなり実戦的なのですね!
渋谷:おっしゃるとおりです。「スケジュール管理」と、事故リスクを含めた「安全管理」、完成物の質を担保する「品質管理」、そして構造物を完成させるための「人員管理」や「予算管理」など、施工管理者に求められるすべての要素を、楽しみながら学んでいただくことができます。建設や施工管理の仕事について、ここまでわかりやすく、なおかつ楽しみながら学べるプログラムはなかなかないと自負しておりますので(笑)、ぜひお気軽に参加していただけましたら幸いです。

建設業界に興味と知識がない学生こそ参加してほしい そして最近の建設業界では女性社員も活躍中!
――そのような御社のインターンシップに「ぜひ参加してほしい学生像」というのはあるでしょうか?
渋谷:もちろん「建設業界を志したい」という方のご参加は大歓迎です。しかし私としては、むしろ「そうではない学生」に向けてプログラムを作っているという部分があります。
日々、誰しもが「何らかの工事現場」を目にしていると思いますが、では実際にその業界で働くとしたら、どのような働き方になるのか? このあたりのイメージは正しく伝わってないはずです。そのため、「建設業界に興味はあるけど、詳しいことは知らない」という方や、「建設業界に行く気はまったくないが、とりあえず見てみようかな?」ぐらいの方もご参加していただけたなら、きわめて網羅的に業界を理解できるプログラムになっているという自信はあります。ですので、むしろ「知識も興味もない」という学生さんにこそ申し込んでほしいですね。



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――建設工事および施工管理の世界では、主に男性が活躍しているというイメージがあります。現時点での女性比率と、女性が活躍できる可能性について教えてください。
渋谷:おっしゃるとおり以前はこの業界、男性だらけでした。しかしここ数年で状況は変わり、工事現場においても女性の施工管理者は増えてきています。また建設業界に入ってくる女性の数と割合も今、非常に増加していると感じています。
確かに以前、建設工事現場というのは女性にとって働きにくい環境でした。現場のトイレも汚かったですしね(笑)。しかし最近は人手不足の影響もあって、「女性もしっかり働ける環境に変えよう」という機運が高まっており、実際、性別にかかわらず、快適に働ける環境へと変化しているのです。
またこれは個人的に思うことですが、職人さんへの応対などは一般的に、女性のほうが男性よりも上手であると感じています。いずれにせよ今後は建設業界で働く女性が増えていくと思いますし、また当社も、その環境をしっかり作っていきたいと考えています。

施工管理の仕事で大切なことはクライアント以上に「職人さん」を大事にすること
――渋谷社長が現役の施工管理者だった頃のことについて教えてください。現場において、渋谷社長はどのようなことを考えながら、あるいは大事にしながら、施工管理業務を遂行されていましたか?
渋谷:私どもの会社はお客様から工事を請け負い、それを完成させるためのプレイヤーの部分を別の会社さんに依頼します。そしてその会社の職人さんたちを、当社が監督して動かしていく――という形のビジネスになります。
そのなかで私が気をつけていたのは、仕事を発注してくださる「お客様」ばかりを見るのではなく、いかに「職人さん」たちが工事を進めやすい状況を作るか? ということでした。
世の中には「お客様第一」ですとか「お客様は神様です」というような言葉もありますが、お客様すなわちクライアントばかりを見ていると、結果的に職人さんがないがしろにされる結果になります。そうなってしまうと職人さんは動いてくれませんし、恥ずかしながら私も若い頃、そのような体験をしました。
しかし職人さんを大切にし、「この方々にできるだけ気持ちよく動いていただき、それによって協力会社さんの利益もしっかり出していこう!」と考えると現場は“ワンチーム”になりますし、信頼関係が深まり、仕事もスムーズに進むようになります。そうすると結果として、お客様にも喜んでいただけるんですよ。
とにかく職人さんと向き合い、お話を傾聴し、もしも必要があれば、現場からの要望はお客様に忖度なしで伝える。そうするほうが、お客様の顔色をうかがってばかりいるよりも逆に良い結果になるということに、3、4年目でやっと気づきました。とにかく「職人さんたちを大切にする」というのが、施工管理においては一番大切なことだと考えています。
「日本という国の土台を作っている!」というプライド そして現場社員に与えられる圧倒的な裁量権
――渋谷社長が考える「施工管理という仕事のやりがい」は何でしょうか?
渋谷:これを話しだすと、いくらでも語れてしまうのですが(笑)、私個人が思うことと、社員にヒアリングした結果から申し上げるなら、もっともやりがいが感じられるのは「日本の大動脈ともいわれる高速道路というインフラを、自分たちは担っているのだ!」という、誇りやプライドの部分ではないかと思います。
あとはシンプルに、建設業の仕事って屋外で身体も動かす仕事じゃないですか? 屋外で身体を動かしていると、実はそれだけで精神的なストレスってものすごく発散されるんです。おそらくはその影響が大なのだと思いますが、「メンタルを病んで休職したり離職したりする人員」の数は、他業界と比べて圧倒的に少ない気がしています。
そして当社の場合でいうと、当社は社員に相当な裁量権を与えています。現場の責任者になると、もう社長とほぼ一緒ですよ。予算の使い方から休みの取り方まで、全部自分で決めることができます。今この瞬間も私は、各現場が休んでるかどうかを把握していません。私の知らないところで、どこかへ遊びに行っている社員もいるかもしれませんね(笑)。
でも、そのぐらい緩い手綱でいいんですよ。社員はそういった“自由”によって、「自分で仕事をコントロールしてるんだ!」「ここは俺の現場なんだ!」という確かな感覚や達成感を抱くことができるのですから。そこが我々北栄電設で働くことの、何よりも素晴らしい点なのではないかと思っています。
自治体や同業界の他社とコラボした異色インターンシップ企画も実施中!
――御社の地元である富山県小矢部市にて「仕事体験ツアー in おやべ」などのコラボ企画を実施しているそうですが、詳細を教えていただけますか?
渋谷:はい。現在、2つのコラボレーション企画を展開しています。ひとつは今おっしゃった「仕事体験ツアー in おやべ」。こちらは小矢部市という自治体と複数の地元企業がコラボすることで、さまざまな仕事を1回のツアーで体験することができるという3日間の企画です。
参画しているのは、まずは小矢部市。ここでは「行政のさまざまな仕事」を体験することができます。そして石動信用金庫さんでは「金融の仕事」を実体験することができ、さらに県内屈指の自動車部品メーカーである小矢部精機さんでは「メーカーの仕事」を体験することになります。そして当社こと北栄電設では「インフラにまつわる仕事」が体験可能です。

これは「どんな仕事が自分に合うのか、まだわからない……」という3年生ぐらいの就活生には、非常に役立つ体験ツアーではないでしょうか。また各社の若手社員の本音が聞ける座談会も用意されていますので、その面でもかなり参考になるはずです。
そしてもうひとつのコラボ企画は「建設業3社コラボ★1Day仕事体験」というものです。こちらは「建設業界のことを、より詳細に知りたい」という人に特化したもので、保温設備・プラント工事の三耐保温株式会社さんと、インフラの塗装・防錆工事を行っている住澤塗装工業株式会社さん、そして高速道路の電気・通信工事を行う当社が参画しています。こちらもさまざまな仕事体験ができるだけでなく、各社の若手社員との「本音の座談会」も用意されていますので、建設業界のリアルを知りたい人にはかなりおすすめできる内容となっています。

――近接する業界の他社さんというのは、新卒人材を取り合う「ライバル」でもあるかと思うのですが、なぜ、そういったライバルとのコラボ企画を行っているのでしょうか?
渋谷:確かに、各社さんはライバルでもあります。しかし私は他社さんと競い合う以前に、まずは学生の皆さんに「建設業っていいよね!」と思っていただくことこそが出発点になると考えています。そういった思いに共感してくれる仲間と出会えたことでこの企画が誕生し、かれこれ5年ほど継続しています。建設業に少しでもご興味がある方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
インタビューした学生に感想を聞きました
K・M:自治体や同業他社とのコラボインターンシップは、業界を決めきれていない学生から、業界内の会社選びで迷っている学生まで幅広く受け入れるプログラムになっていて、学生の状況に寄り添ってくださる姿勢に魅力を感じました。
例えば、工事現場で重機を動かす体験ができる、VRのオリジナルコンテンツや施工管理の仕事が分かるシミュレーションゲーム(これがほんとにゲームとしておもしろいのだとか!)など、どのフェーズの学生でも楽しみながら働く事に対する解像度を上げることができます。
また、先輩社員との座談会ではさらに具体的に将来への想像を広げることができそうと思いました。
N・R:やはり施工管理シミュレーションゲームがとても興味深かったです。工程・安全・資材・人員・予算の管理についてゲームを通しながら学ぶことができるわけですが、こんな体験、ゲームでもなかなかできないと思います。
インターンシップでここまで楽しそうで、またリアルに沿った体験をできることはかなり貴重なのだろうと思いました。 コラボ企画の「仕事体験ツアー in おやべ」は公務員・製造業・金融業・建設業の4業種を同時に知ることができるのは志望業種が決まっていない人にとって最適かと思いました。
U・H:一貫して大切にされていると感じたことは、「学生と企業のミスマッチを防ぐ」ということでした。
オフィスツアーでその場にいる社員に突撃インタビューで質問できる機会があり、実際に働いている様子や、率直な答えを聞くことができ、一緒に働く人のイメージを解像度よく持つことができると思います。
現場のVR体験はとても面白そうで、実際の仕事内容がわかるようなので体験してみたいと思いました。