内々定という言葉を聞いたことがあるでしょうか。就活を始めたばかりだと、「内々定って何?」「内定と何が違うの?」など疑問も多いかもしれません。そこで今回は就活における内々定について解説していきます。
Table of Contents
内々定とは
内々定とは、「正式な内定を出す前の、内定」のようなものです。選考を経て企業が「この人に入社してほしい」と結論を出した学生に対して、内々定が通知されます。
なぜ最初から内定を出さないかという理由には、政府の意向が関係しています。政府は企業に対して内定通知を出す時期を要請しており、この要請に法的拘束力はないものの、大企業はこれに従っているのが現状です。しかし選考がこの要請時期より前に完了した場合、内定を出さずに学生をつなぎとめることは難しくなります。そこで企業は、内々定という形で学生に内定の意思を伝えています。
内定との違い
内定と内々定はどちらも、企業が学生に対して入社してほしいという意思を表すものです。両者の大きな違いは、労働契約が成立しているか否かになります。内々定に法的拘束力はありません。そのため、内定は取り消されると解雇と同じ扱いになりますが、内々定にそういった効果はありません。
内定の前にあえて内々定を出すのは、上記のように新卒採用における内定通知時期の問題です。そのため、中途採用では内々定というものはなく、新卒の就職活動でのみ出されるものです。
内々定から入社までの流れ
最終選考を受け、そこに合格した学生に対して内々定が出されます。多くの場合、内々定の通知と共に入社するかどうかをいつまでに決めてほしいか期限が言い渡されるので、学生はその間に検討します。
学生が入社の意思を固めたら、政府が要請する内定通知時期に入り次第、内定が出ます。これを受けて学生は内定承諾書を提出し、内定式に参加。内定式は、10月1日に行われることが多いです。そして年が明けた3月に大学を卒業し、4月に入社式が行われ、勤務がスタートします。
内々定の承諾と辞退
企業によっては、内々定が出された時点で承諾書の提出を求められることもあります。その書類にサインしたからといって、必ずしも入社しなくてはならないというわけではありません。よく「内々定や内定を承諾した後に入社をやめたら、何かペナルティがあるのか」と心配している方もいますが、そういった罰則はありません。内定を持ちながら就活を続けることは可能です。
とはいえ、承諾後に内定を蹴ることは企業側に大きな迷惑になるので、辞退をするなら、なるべく承諾書の提出前にしましょう。
内々定の取り消し
内々定は内定と同じように、理由なく取り消しになることはありません。しかし、それなりの事情があれば取り消される可能性もあります。例えば、単位が足りなくて卒業できなかった場合。内定は「3月に大学を卒業すること」を条件として出されているので、その条件が満たされなければ入社が認められません。
場合によっては、半年間はアルバイトして働き、9月に大学を卒業したら正社員として入社するといった対応をとってもらえることもあるので、どうしても卒業が難しい場合は早めに人事の方に相談しましょう。
また、怪我や病気をしたことにより取り消しになることもあります。業務に支障がない程度であれば問題ありませんが、出社ができなかったり、想定していた業務ができなかったりする場合は、やむを得ず取り消しになることもあるでしょう。
さらに、学生が企業に虚偽の申告をしていた場合も、取り消しの対象です。大学名を偽っていたり、犯罪歴を隠していたりといった大胆なものだけでなく、留学期間を本来より長く申告していたり、TOEICの点数を少し水増ししたりといったものでも取り消しになる可能性はあります。
企業都合で取り消しになるケースもあります。最近では新型コロナウイルス感染症拡大による業績悪化を理由に、採用を取りやめると通知されたケースもありました。
また、ベンチャー企業では、大企業に比べて人事制度がきちんと整っていなかったり、事業環境や事業構造が変化しやすかったりといった背景から、内々定・内定の取り消しが発生することがあります。こうした不運にあわないためにも、選考中や内々定をもらった段階で、内定をいつもらうか、入社までどう進むのか、ステップやスケジュールを確認しておきましょう。
内々定取り消しの事例
実際に内々定が出てから取り消しになった事例を紹介します。問題となったのは、不動産スタートアップ企業です。この企業は2022年度の新卒採用において、10月に入ってから47人中21人の内々定を取り消しました。学生に対し、入社後の業務に活かすため、宅建の資格を取るための教材を配布したり、内々定者向けの座談会を開いたりと、入社に向けたステップを行っていたにも関わらず、突然の取り消しを決定しました。
これにより、Twitterにて内々定を取り消されたことが話題になり、企業から内々定を取り消した学生に、謝罪と合意書へのサイン、解決金30万円が提案されました。後の調査では、内々定通知後に行われた座談会とアンケートが実質的な最終選考の位置づけになっており、そこで不適格だと判断された学生が内々定を取り消されていたことがわかりました。
企業担当者は「新卒採用2年目の弊社に採用活動・運営における業務経験が浅く、『内々定』という社会通念への認識も不足していた」と説明しています。このことから、学生側も、企業が内々定をどのように扱っているかを確認することが重要だとわかります。
内々定について理解しよう
今回は、内々定について解説しました。就活をするうえで、内定との違いや、内々定から入社までのスケジュールを把握しておくことは重要です。また、内々定が出ても取り消されてしまう可能性があります。もし自身の問題ではなく企業都合で取り消された場合は、まずは大学の就職課などに相談してみましょう。