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【読書・就活】 人の役に立つ仕事がしたい!でも、社会貢献ってなんだろう?| 市川沙央『ハンチバック』から考える「就活のカタチ」| ミルフィーユの考察

はじめに

こんにちは。
ミルフィーユです。

皆さんはボランティア活動をしたことはありますか?

大学や民間団体、学生時代に
授業の一環として取り組んだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回のテーマは “社会貢献” です。

就活のガクチカでもアルバイトや留学などと並んで
定番のエピソードでもあるボランティア。

自主性や社会貢献性といった面から評価される傾向にあります。

“社会貢献”

社会のために自分は何ができるのかな??

私も今、
学生ボランティアをしていてよく考えることなんですが、

自分の能力は誰のために役立つのか、
その能力はいったい誰に求められているのか。

これらの問いは、就活にも通じるものがあるなと思います。

……でもなかなか答えが見つからない。
就活の難しいところです。

そんな悩みについて今回は一冊の本から考察していきます。

取り上げるのは
市川沙央さんの『ハンチバック』

文學界新人賞受賞、
そして、第169回芥川賞にノミネートされ、今話題の小説ですね。

重度障がい者が主人公になっていますが、
作者である市川沙央さんも先天性ミオパチーという身体障がいを持っています。

本記事では「障がい」を通して、
私たちがこれから飛び込む社会の“かたち”を捉えていければと思います。

自分のスキルって誰のために役立つのかな?

就活のガクチカ作りにボランティアをしてみようかな?

という学生さん。

就活の息抜き、
ちょっと寄り道程度に覗いていってくれたら嬉しいです!

【“ハンチバック”…「背中が曲がった猫背」という意味】

あらすじ

重度の筋疾患(先天性ミオパチー)を持つ主人公・井沢釈華(しゃか)は、吸引機を片時も手放せない生活を送っている。背骨がS字に曲がった釈華にとって、社会と関わる術は、有名私大の通信課程と〈Buddha〉名義のコタツ記事ライターのバイトだけ。両親が残した億単位の遺産と、グループホーム・イーグルサイドの管理人として、お金には困らず生活していた。

「子どもを宿して堕ろす」そんな夢をTwitterの零細アカウント〈紗花〉に呟いていた釈華だったが、ある日、ヘルパー・田中による異性介助(排せつや入浴など身体的な介助を異性から受けること)をきっかけに事態は進展していくーー。

『ハンチバック』から考える「就活」:
「読書バリアフリー」

皆さんは「読書バリアフリー」という用語をご存じでしょうか。

「読書バリアフリー」とは、2019年に施行された
“全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に向けて、視覚障がい者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進していく”
という法律です。
(※厚生労働省『読書バリアフリー法について』参照)

現在、視覚障がいを持つ人が利用可能な書籍は少なく
行政の対応も十分とは言えない状況にあります。

小説『ハンチバック』で取り上げられているのは、
そんな“紙の本”に対する不満です。

私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に行けること、ーー5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。【※マチズモ:健常者優位主義】(『ハンチバック』本文より引用)

皆さんは〈紙派〉と〈電子書籍派〉の対立を知っていますか?

「1ページ1ページ紙をめくる感触が良いよね」
「いやいや、持ち運びに便利だから電子書籍でしょ」

私たちの大半は個々の趣向をもとに、どちらかを選ぶ権利があります。

しかし、『ハンチバック』の主人公・釈華は
紙の本を身体的な理由から持つことができません。

厚みが3、4センチはある本を両手で抑えて没頭する読書は、他のどんな行為よりも背骨に負担をかける。(『ハンチバック』本文より引用)

これは先天性ミオパチーだけの障がいではありません。

あらゆる障がいによって
「読書ができない」多くの人々がいます。

身体障がいを理由に「紙の本」を持てないという不便さ。

皆さんはその不自由さを想像したことがありましたか?

『ハンチバック』から考える「就活」:
障がいって何だろう?

ここで皆さんに是非知ってもらいたい考え方があります。

皆さんは〈個人モデル(医療モデル)〉と
〈社会モデル〉という考え方を知っていますか?

この二つは、障がいによる「困難」の所在を個人に置くのか、
それとも社会に置くのか、という違いがあります。

〈個人モデル〉は、障がい者が困難に直面するのは、
個人の心身機能が原因であるという考え方。

個人に「困難」の原因があるというものです。

一方〈社会モデル〉とは、
障がいによる困難は社会の仕組みに原因があるという考え方です。

この2つのモデルを主人公・釈華の例で考えてみましょう。

〈個人モデル〉では、筋疾患により、
紙の本が持ちにくいという、釈華個人の身体機能に焦点が当てられます。

〈社会モデル〉の視点では、
本が「紙」の形態をしていることによって障害が生じるという、
社会の機能の問題であると捉えられます。

視点の違いによって「困難」の所在が変わること、
お分かりいただけたでしょうか。

私がこの〈社会モデル〉の概念を知ったのは、
高校一年生のときでした。

〈個人モデル〉の見方で障害をとらえていたことに気が付き、
〈社会モデル〉という180度異なるあたらしい視点に
目から鱗が落ちたことをよく覚えています。

私は今、大学のノートテイクというボランティア活動をしています。

ノートテイクは、耳の聞こえない学生に代わって、
講義で教授が話したことを文字に起こす
その学生の「耳」の役割を担うボランティアです。

皆さんもボランティア活動をする時、
是非〈社会モデル〉を思い出してみてくださいね。

【※〈個人モデル(医療モデル)〉は現在、医療現場で活用されている見方です。
どちらが良い/悪いではなく、一つの考え方としてとらえて頂きたいです。】

さいごに

今回は『ハンチバック』から「社会貢献」について考えてみました。

釈華を取り巻く「読書バリアフリー」の世界。

「読書」という行為一つをとっても、
様々な困難があることを知っていただけたと思います。

そして、「障がい」を通して社会の見方が少し変わった!
という方もいるのではないでしょうか。

私が今回お伝えしたかったのは
「視点の違い」によって解決の糸口が見えてくる ということです。

自分の能力は誰のために役立つのか。

その能力はいったい誰に求められているのか。

答えを見つけるのが難しい問いですが、
就活に行き詰まった時、

今回お話しした「読書バリアフリー」や
〈個人モデル/社会モデル〉といった言葉を思い出してもらえると嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

ミルフィーユでしたm(╭• ᴥ •╮)m +.゚

今回紹介した書籍


 
 

『ハンチバック』、市川沙央(著)、文藝春秋
 
第一回はこちらから↓
【小説から考える「就活」 Ⅰ. 就活の早期化編】  – インタツアー【メディア】新しい就活のカタチ (intetour.jp)

                             インタツアー学生編集部

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